2017年4月14日金曜日

東芝問題

東芝と言えば日本を代表する名門企業と誰もが信じていた。戦後世代は特に電気釜の思い出を持っているだろう。今見ても構造のシンプルさ、装飾を排した無駄のないデザインはToshibaのロゴと共に特記されるべきだ。

また東芝は原子力分野で先進的な技術を持ち、以前マイクロソフトのビルゲイツが、設計を行う「磯子エンジニアリングセンター」を訪ねている。発展途上国のエネルギー問題解決にも資する20〜40万キロワット程度の、20年経つと回収する安全性の極めて高いパッケージ型次世代原発開発のための資金1,350億円をビル&メリンダ・ゲイツ財団から拠出のためだった。しかし買収していたウエスティングハウスの問題が、一兆円を越えるとされる損失の主要原因になった。東電福島原発事故以後各国の規制が当然ながら厳しくなり、結果大きな赤字をだすことになったのだが、この間の対応に問題があったことは容易に推察される。


 2年前には巨額粉飾決算が露呈し厳しい批判にさらされ、監査法人の問題も大きく取り上げられた。しかし社長外役員の退陣程度で済まされ、刑事事件で立件されることはなかった。エンロンやワールドコムの破綻が刑事訴追され、世界的に有名な会計事務所も厳しい追及がなされた結果消滅した米国とは大違いだ。これを見ても我が国の経済事犯への責任追及がいかに甘いかが分かる。今回の問題は東芝の社内体制刷新もいい加減だった帰結といえる。

一企業の経済的問題に留まらないことに注意が必要だ。経済界に限らず官界、政界での枚挙に暇のない不祥事によるモラルの低下が、嘗ての一億層中流と言われた日本の活力を低下せしめてるともいえる。

またあたかも宗教のお題目のように原発反対を唱え、冷静な論議を行おうともしない一部勢力も、調和のとれた今後の発展に障害となる。中国、韓国外は次世代を睨んだ開発を進めている。ましてや北朝鮮のそれは許されない段階をとっくに過ぎている。こうしたときに核技術が失われれば、それこそ廃炉に当たっての技術者さえ不足する事態も想定される。そのためにも核先進国フランスとの協定が締結されていることは重要な意味を持っている。世界情勢をにらみ、我が国発展のために冷静な判断が求められている。

監査法人の適正意見が得られないままの遅れた異常な東芝の決算発表は、一企業東芝の経済的問題以上の懸念すべき重大な「事件」なのだ。

*写真はもう20年以上前の「東芝製」レターオープナー、一時期はやったが今はほとんど見かけない。れっきとしたMade in Japan、現用中。

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