第82回になるル・マン24時間レースが6月14日から15日にかけ行われた。今年はポルシェの復帰によってトヨタ、アウディとの三つ巴の争いが予想された。そして日本人ドライバーとして初めて中嶋一貴がポールポジションを取り、トヨタの昨年2位の雪辱に期待が盛り上がった。
序盤からそのスピードでアウディ、ポルシェを圧倒し14時間近くトップを快走していた中嶋一貴のTS040 ハイブリッド7号車が、突然の電気系統故障によってストップ、リタイアとなってしまった。ハイブリッドシステムの複雑なシステムの不具合は、トヨタに衝撃を与えたに違いない。
しかし雨による事故でダメージを受け、ピットで大修理のトヨタ8号車は一時最後尾近くにまでなってしまったが、徐々に順位を上げていた。また昔からル・マンには魔物がいるといわれ、何が起こるのか予想できない、を実証するかのようにアウディ、ポルシェにも襲いかかり予断を許さないレース展開を見せた。
ル・マンに復帰したポルシェは終盤トップをキープしていたが、これもトラブルに見舞われリタイヤ。アウディの1-2となり5年連続13度目の優勝を決めた。トヨタ8号車はねばり強いドライヴィング、3位でフィニッシュ2年連続の表彰台とはなった。
思うに、長い歴史とヨーロッパの文化というべきル・マンは技術だけでない「何か」があるのだろう。しかし1991年にマツダが、ロータリーエンジンによって日本車として初めての優勝を飾りその技術を知らしめた。しかし翌年からレギュレーション変更によってロータリーによる参戦はこれが最後となってしまった。
その後トヨタの参戦があり1999年TS020はBMWとの激しいバトルを繰り広げ、残念ではあったが2位につけた。この時はメルセデスはマシンが飛行機でもないのに宙を舞い幸い人的被害はなかったが、その技術に疑いを持たざるを得なかった。TV中継でその様子を見ていたが、解説者が「アッ、飛んだ」と叫んだことを覚えている。
トヨタはル・マンマシンにもハイブリッドを導入、そのトルクを活かした加速力によって速さを見せつけアウディも採用、今年復帰のポルシェもハイブリッドマシンによる参戦。ハイブリッド技術は高速走行が多いヨーロッパではアドバンテージはなく、ニッチな技術だと蔑むような評論家も多かった。しかしアウディ、ポルシェもハイブリッドによる参戦をどう見るのだろうか。フェラーリにも今やあるのだ。
ヨーロッパの文化といえるル・マンで優勝を飾るためには、技術だけでないサムシングがあるのだろう。F1でもトヨタは2位が最高位。今年のル・マンはトヨタの速さ、アウディの強さ、ポルシェのしぶとさが印象に残った。来年こそトヨタの雪辱に今から期待したい。
それにつけても、かつてのメルセデス、ジャガーが止めてしまったり、TV中継もなくなってしまったり、新聞での採り上げも少ないなどーターモスポーツの環境が厳しいことが気がかりである。トヨタの豊田社長は自らレーシングマシンのステアリングを握り、安全性、環境対応はいうまでもなくその先の、ドライヴの楽しさが実感できる車づくりをも目指していることに期待したい。
*TS040 HYBRID #7 トヨタ ホームページから
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